上高地の河童橋

こんにちは。もりもり先生です。

ようやく9月に入り、少しですが最高気温が下がってきました。

ナシやキノコなど、秋の食べ物がスーパーに並び始めましたね。

これから魚もおいしくなってくるので、食いしん坊の私は何を料理しようか今からワクワクです。

水族館や川で魚を見ると「わぁ綺麗!」ではなく「あれ食べれるかな」となります。


さすがの私も食べれるかなとは思わなかったのは、長野県上高地の川です。

底に色が付いているのかな?と思うほど碧いです。

川岸ぎりぎりまで近づいて、水を手ですくってみたり川底をいろんな角度から見てみました。

でもやはり透明なんですよね。

光の屈折と理論は分かっていても確かめたくなる事象です、碧い川。


ところで上高地ではお土産屋さんで河童のグッズがたくさん売られています。

『河童橋』という観光スポットがあるためです。(写真)

かけられた時代も名前の由来もわからない、不思議な橋です。

河童橋というと、有名な小説があります。

芥川龍之介の『河童』です。晩年の名作と言われています。


「どうか Kappa と発音して下さい。」とう不思議な文章で始まります。

精神病院の患者の第二十三号と呼ばれる人が誰にでも話す不思議な話が描かれています。

この患者「僕」は上高地の温泉宿から穂高山に登ろうとした際、河童橋のところで河童に出会います。

追いかけていくうちに河童の世界に入ってしまい、河童たちに特別保護住民として保護されます。

そして河童たちと暮らしていくのですが、「僕」は河童と人間の価値観の違いを知り、

様々な河童たちと交流するうちに河童を超えて「生きる」ということの哲学の話にまで発展します。


私が面白いなと思ったところが、河童のお産の話です。

河童の世界では産むかどうかではなく、生まれたいか生まれたくないか、が尊重されます。

小説の中ではとある河童の旦那さんが奥さんの河童のおなかの中の子に

「お前はこの世界へ生まれてくるかどうか、よく考えた上で返事をしろ。」

と問いかけます。

するとおなかの中から気兼ねしているような小声で子供から返事がきます。

「僕は生まれたくはありません。第一僕のお父さんの遺伝は精神病だけでもたいへんです。その上僕は河童的存在を悪いと信じていますから。」

すると産婆さんが何かをおなかの中に吹きこみ、奥さんのお腹はなにもなかったようにぺたんこになります。

子供が決めるのです。なかなかこれは思いつかない発想だ…と考えてしまいました。


話が進むにつれて哲学色が強くなりますが、私は何より芥川龍之介の文体が好きです。

現代文学やライトノベルなどになれていると最初はとっつきにくいかもしれませんが、

芥川は「蜘蛛の糸」や「羅生門」「トロッコ」など読みやすい短編も多いので、試してみてはいかがでしょう。


芥川龍之介の命日は「河童忌」と呼ばれます。

17回忌まで遺族や親交のあった文学者たちが行っていた法要ですが、戦争がきっかけで途切れました。

その後、没後90年となる2017年から田端文士村記念館が世話役となって「河童忌」イベントが開催されています。

法要の名前に使われるほどこの作品は芥川龍之介の晩年の思想が影響していると言われています。


今回は河童橋に行った時の記憶から検索してこの小説の存在を知り、読みました。

(遅読の私でも数時間で読めました。河童語に気を取られてちょっと時間かかりました。)

こういう形での本との出会いもなかなか面白いものです。

私は「トロッコ」が大好きなので、また読み返したいなあ、と思ってます。お勧めです。


これから涼しくなるし、読書の秋ともいうし、

いつもとは違ったジャンルの本を読んでみるのも面白いと思いますよ。

ではまた。

もりもり先生

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